初めて人力車の購入やレンタルをお考えの方は、人力車メーカーの選び方や発注のやり取りについて知らないと、コスパに満足できなかったりトラブルになる場合もあります。当方は人力車業界の経験が長く知識が豊富です。複数の人力車屋から人力車のレビュー聞いているので、初めての購入をご検討の方にアドバイスをいたします。
人力車の構造・名称
人力車は2つの車輪を軸でつないでベアリングで回すというシンプルな構造で、自転車のようなギア・チェーン・ブレーキもありません。アクセルやブレーキの代わりに俥夫の足で人力車のスピードをコントロールしたり止めたりします。ハンドルの代わりに俥夫が梶棒を使って曲がります。
明治時代のデザインを継承
人力車は明治時代に発祥し、その後車輪周りの材料は木製から金属やゴムタイヤに代わりましたが、基本構造・デザインはそのまま受け継がれています。タイヤは40インチで人力車のシートに座ると視界の高さを楽しむことができます。また開閉式の幌がついており強い陽射しや雨を遮ることができます。
人力車製造メーカーは現在2社
現在人力車の製造メーカーは、飛騨高山の「三清物産」(1978年創業)と東京浅草の「くるま屋」(1998年創業)の2社のみです。実は静岡県伊東市に「升屋製作所」という老舗人力車メーカーがあったのですが、2007年に火事で工場が全焼し廃業したそうです。
人力車メーカー2社の比較
両方の人力車を所有する会社の俥夫数名の取材等に基づく。ちなみに価格や納期はほぼ同等。
三清物産
情報:1978年創業の老舗、シェア80%と公表。2023年に特定の人力車営業者との独占契約をやめ、自由取引となった。
俥夫の評価:振動が少なく乗り心地がよい。細部まで作り込みが丁寧。
総評:老舗メーカーとして伝統的な人力車を細部まで丁寧に作っている。バネと呼ぶサスペンションが効いているので振動が少なく極上の乗り心地。プロの人力車俥夫からの評価が高く、発注が激増すると予測する。ただし増える発注に対して対応するキャパシティに不安がある。人力車職人の育成が今後の維持成長の鍵を握ると考える。
くるま屋
情報:1998年に観光人力車として創業。後に人力車を自ら分解修理したのを機に、人力車の製造販売事業を加える。
俥夫の評価:振動が直接伝わって乗り心地は三清より劣る(バネと呼ぶサスペンションが見せかけの飾りで機能していない)。梶棒など細部の作り込みも三清と比べると劣る。
総評:老舗の三清物産が特定の人力車営業者と独占契約していたため、くるま屋は他の営業者からの発注があったが、三清が自由取引となったので、今後の観光人力車の発注は減少すると予測する。ただし伝統的な人力車に拘らないユニークな人力車を作れるので、観光以外のエンタメ等のニーズに応えられると期待する。
人力車の乗り心地はバネで決まる
人力車の振動を緩和し乗り心地をよくするのが、バネと呼ばれる弓を2つ合わせたようなパーツ。自動車のサスペンションの働きをします。この弓の形状が上下の振動を緩和してくれます。明治時代の人力車は木車輪だったので、その振動や衝撃をバネで緩和していました。現在は空気タイヤになり振動は緩和されますがバネが効いているとさらに緩和されます。ところが右の画像のバネは支柱で固定している見せかけのバネなので機能しません。バネが効かないとタイヤや車体にも負荷がかかるので持ちが悪いと、両方の人力車を知る俥夫が証言していました。
人力車のタイヤメーカーは1社
日本で唯一人力車のタイヤを製造している会社のホームページによると、人力車のタイヤは42インチ程度(直径98cm)だそうで、タイヤとチューブの既製品はおそらくありません(当社調べ)と書いてあります。どうやって作るのかというと、リヤカー用の太いタイヤを切断して2本分をつなぎ合わせているとのこと。なので人力車のタイヤをよく見ると必ずつなぎ目があるのがわかります。日本全国の人力車のタイヤを製造しているので、納品を長期間待たされることがあるそうです。
人力車は海外からの発注が増える
海外は日本食ブームで、寿司店など日本食のレストランがどんどん出店しています。そんな日本食のレストランで、門から店まで広い敷地内を人力車で移動するというサービスを導入したという事例もあります。人力車は日本文化を象徴する美しいデザインと極上の乗り心地があるので、今後も海外のさまざまなシーンに人力車が活用されるチャンスは増えていくでしょう。